Googleという検索エンジン
少なくとも15年以上にわたってインターネットに触れてきた私としては、いまだにインターネットの入り口というのは、その目的地を知らない場合に限っては「検索エンジン」でありました。
もっぱら私もGoogle検索にはお世話になっていて、たまにBingを評価のために使っていましたが、Googleでいいやと使い続けておりました。まあ数年前までは使っているブラウザはChromeでしたし、スマホもPixelでしたから、Googleを使うというのは自然だったわけです。
広告や検索エンジン最適化に対する嫌気
ここ数年のGoogleの検索結果はもはや正気では使えないと思っています。
検索エンジンに対するユーザーとしての私の評価基準は「検索クエリ(質問)に対しての誤りを含まない十分な回答がなされたページが返ってくること」であります。これを期待する中で、Google検索で起きるのは以下です。
- Googleに広告を出稿している何かが表示される。(2件程度)
- 検索エンジン最適化された企業のページ等が出てくる。 (テーマによる)
- 検索クエリに対する適切な応答が返ってくる。 <= 本来欲しいもの
上の順序は、単にGoogle検索結果の表示順そのものと対応していて、つまり、私が本当に欲しいものはどこかに埋もれているってことが起きます。それを見つけるまでゴミを漁らなければいけないというのは正気を疑います。
Kagi の発見
2024年の11月頃、Hacker NewsでKagiについての話題が挙げられたのを見つけて、試しに使うことにしました。(検索だけのプランでも 11 $ / 月 なのでそれなりに抵抗はありました。決して安くはない......) 2024年頃は色々プライバシーに気をつけたいなって思ってGoogle Drive にあげていたファイルを全部消しにかかって、セルフホストしたNextCloudにうつしたり、ブラウザをVivaldiにしたりという取り組みをしていましたから、その一環としてやってみたということになります。
それで、始めるきっかけになったものの一つとしてあったのが Kagiのユーザー個別ルール統計です。Kagiではドメインごとに検索結果上での表示を重み付けすることができる1のですが、他のユーザーがどういった重み付けをしているのかに関するデータです。
リンクを踏んでもろくに情報を見ることができないPinterestが嫌われていたり、MDNとかArchLinuxのWikiとかWikipediaが上位に設定されているのを見て、みんな検索結果の何に不満を覚えていて、何が見たいのかってことがわかって面白かったのと、これで私自身のGoogle検索への不満が理解できたというのがあります。
パーソナライゼーション
Kagiの利用当初は、ユーザー個別ルール統計にしたがって自分の検索結果も重み付けをするようにしていました。私もソフトウェア開発者なので、自分の困りごとを英語で検索する分には、関連するGitHubのページや、MDNのページが上の方に出てくるのがとても快適で、とりあえず仕事の効率化という点では十分に効果を発揮しているので継続利用をすることにしました。
ただ、日本語クエリに対しては、そもそもパーソナライズしていないので、広告がないとか以外にはあまり効果が発揮できていませんでした。
ということで追加したのが以下の設定です。
qiita.com,lower
magazine.techacademy.jp,block
www.ipa.go.jp,pinned
weblan3.com,block
mofa.go.jp,upper
jst.go.jp,upper
ndl.go.jp,pinned
ja.wikipedia.org,pinned
mhlw.go.jp,upper
jma.go.jp,upper
soumu.go.jp,upper
kantei.go.jp,upper
kyoto-u.ac.jp,upper
tokyo.ac.jp,upper
ci.nii.ac.jp,upper
政府系ドメイン (go.jp) と学術系への上位への重み付けと、SEOが強いのか上の方に出てくるけど嬉しくない技術記事を書いてるところへのブロックがあります。 (これに加えて、まとめブログを一掃しています。)
いったんこの設定で、健康情報とか変なものを信じてしまうと致命的なものについては、少なくとも権威のあるものたちが出てくることになるので便利に使えるんじゃないかなって思って使っています。まあ変なの出たりいいサイトを見つけたら検索結果のところから重み付けを変えれるので積極的に使えばいいよねってなっています。
レンズ
上記は、普通に検索をしてその検索結果を重み付けするだけだったのですが、そもそも特定のドメインのページだけ探してきてくれればいいやという話があります。Googleの詳細検索にある以下に対応する設定ですね。
レンズは大体これにラベルをつけて保存できる機能のようなものです。Kagi - レンズ
Kagi には Custom Bang という、特定キーワードで特定機能を呼び出すという機能があり、レンズでも利用できます。例えば私は research
というキーワードを持った arxiv.org, researchgate.net, *.edu, *.ac.jp, *.jst.go.jp
からの検索結果だけを得るレンズを持っているのですが、これを使うときには検索欄で !research ~~~
と書けば良いということです。
デフォルトで用意されているのは英語圏のためのものですから、自分では以下のものを用意して使っています。さっきの健康情報みたいな話だとホワイトリスト形式のがよっぽど体験としては良いことに気づいたので、今ではこれらを駆使しています。
bang | domain |
---|---|
!research | arxiv.org, researchgate.net, *.edu, *.ac.jp, *.jst.go.jp |
!n360 | toyokeizai.net, *.huffingtonpost.jp, *.cnn.co.jp, *.people.com.cn, *.chosunonline.com, www3.nhk.or.jp, www.bbc.com, www.asahi.com, www.sankei.com, *.nikkei.com |
!gov | *.go.jp |
(※!n360については脚注2)
Kagi Assistant
ChatGPTなり、チャット形式でAIとやりとりするサービスは何かしら1つくらい持っておくと便利だろうという中で、Kagiにそれがあるので利用しています。(そのために + 16.5 $ / 月 払って $27.5 / 月 を支出しています。なお、4/19 まではこの機能を最上位プランでなければ使えなかったのですが、今はモデルの制限こそありますが $11 / 月 の方にもおりてきたみたいです。)
多分他のAIチャットに対して差別化できることがあるのだとすれば、Kagi AssistantがWeb検索を行う場合に、検索結果の重み付けもしくはレンズを強制できることです。ニュースについての背景説明と要約を作ってもらうときに n360 レンズ を強制するみたいな使い方をしています。こちらも Custom Bang が使えるので、検索欄に !n360a 米国の関税措置について教えて
とか書けば背景説明+要約してもらえる感じになっています。
検索を伴わないのなら別に変わらないのじゃないのかなと思います。画像生成とかコード実行とかには対応していないので、検索+AIチャットという組が主たる目的でないのならあまり便利じゃないかも。
Orion Browser
これ自体は Kagi の会社が作っている ブラウザ ってことで今までの話とは異なります。
このブラウザの特徴は、Safari同様のWebKitのエンジンを使っていながら、広告・トラッキングのブロッカーが組み込まれていて、FirefoxやChromeの拡張機能が(一部、結構不安定ながらも)使えるということにあります。
普段利用のブラウザとしてはVivaldiをおすすめしたいのですが、まあ Chromium 一強をちょっとだけ崩すというつもりで、自分のAppleの端末ではOrion Browserを普段利用しています。
たまにバッテリーの消費が流石に著しいのでは?と思うような挙動があったり、まだまだ安定というところまでは来ていないような気がします。
まとめ
自分にとってのインターネットの基本体験であるところの検索が結構改善されたので、私としてはKagiはだいぶおすすめしたいものになります。全く使ってなければ課金を一時的に停止するとか、今のところはユーザー寄りの姿勢をちゃんと貫いているところも好印象なので、私としては応援していきたいなというところです。
以上!
-
ピン留め(トップに持ってくる)/上位/通常/下位/ブロック(表示しない) に重み付けできる Kagi - 検索結果のパーソナライズ ↩
-
n360: バイアスのないニュースは存在しないと思っています。それならいっそ、両面を含めてしまうことによって中立にしようという趣旨の設定です ↩